東大塾長の山田です。
このページでは、「サイクロイド」の詳しい解説と,その他の入試で登場する媒介変数表示で表される曲線について解説していきます。
ぜひ勉強の参考にしてください!
1. サイクロイドとは?
1つの円が定直線に接しながら,滑ることなく回転するとき,その円周上の定点 \( P \) が描く曲線を サイクロイド といいます。
上の図では,半径1の円周上の定点 \( P \) が原点 \( O \) の位置からスタートし,この円が \( x \) 軸に接しながら,滑ることなく回転しているときのようすです。
この図の点 \( P \) が描く赤色の曲線が サイクロイド です。
※ サイクロイドは,円の一部や放物線ではなく,まったく別物です。
2. サイクロイドの媒介変数表示
サイクロイドは,次のように媒介変数表示で式を表します。
サイクロイドの媒介変数表示は
\( \color{red}{ \large{ \begin{cases}
\displaystyle x = a (\theta – \sin \theta) \\
\displaystyle y = a (1 – \cos \theta)
\end{cases} } } \)
サイクロイドが上記の媒介変数表示となることの解説していきます。
円の半径を \( a \),定直線を \( x \) 軸とし,円周上の定点 \( P \) の最初の位置を原点 \( O \) とします。
この位置から,円が角 \( \theta \) だけ回転したときの点 \( P \) の座標を \( (x, \ y) \) とします。
このとき,
\( [OA(円が転がった地面の長さ)]=[AP(弧の長さ)] \)
よって \( \color{blue}{ OA } = \stackrel{ \Large \frown }{ AP } \color{blue}{ = a \theta } \)
また \( \color{blue}{ BA = a \sin \theta }, \ \ \color{blue}{ DC = a \cos \theta } \)
したがって
\( \begin{align}
\displaystyle \color{red}{ x } & = OB \\
& = OA – BA \\
& = \color{blue}{ a \theta } – \color{blue}{ a \sin \theta } \\
& \color{red}{ = a (\theta – \sin \theta) }
\end{align} \)
\( \begin{align}
\displaystyle \color{red}{ y } & = BP = AD \\
& = AC – DC \\
& = a – \color{blue}{ a \cos \theta } \\
& \color{red}{ = a (1 – \cos \theta) }
\end{align} \)
以上のように,サイクロイドの媒介変数表示は
\( \color{red}{ \large{ \begin{cases}
\displaystyle x = a (\theta – \sin \theta) \\
\displaystyle y = a (1 – \cos \theta)
\end{cases} } } \)
となります。
3. サイクロイドの面積
次は,サイクロイドの面積について,問題を通して解説していきます。
媒介変数表示 \( \begin{cases}
\displaystyle x = a (\theta – \sin \theta) \\
\displaystyle y = a (1 – \cos \theta)
\end{cases} \ (a>0, \ 0 ≦ \theta ≦ 2 \pi) \) で表されるサイクロイドと,\( x \) 軸で囲まれた面積 \( S \) を求めよ。
まず概形は下の図のようになります。
サイクロイドは \( y = f (x) \) の形で表すことができないので,媒介変数表示のまま積分をするしかありません。よって,数Ⅲの積分で学習する 置換積分 を使って面積を求めていきます。
【解答】
\( x = a (\theta – \sin \theta) \) より
\( \displaystyle \frac{dx}{d \theta} = a (1 – \cos \theta) \)
\( \displaystyle ∴ \ \color{blue}{ dx = a (1 – \cos \theta) d \theta } \)
\( x \) と \( \theta \) の対応は次の表のようになる。
\( \large{ x } \) |
\( \large{ 0 \ \longrightarrow \ 2 \pi a } \) |
\( \large{ \theta } \) |
\( \displaystyle \large{ \color{magenta}{ 0 } \ \longrightarrow \ \color{magenta}{ 2 \pi } } \) |
よって
\( \begin{align}
\displaystyle \color{red}{ S } & = \int_{0}^{2 \pi a} y dx \\
\\
& = \int_{\color{magenta}{ 0 }}^{\color{magenta}{ 2 \pi }} a (1 – \cos \theta) \cdot \color{blue}{ a (1 – \cos \theta) d \theta } \\
\\
& = a^2 \int_{0}^{2 \pi a} (1 – \cos \theta)^2 d \theta \\
\\
& = a^2 \int_{0}^{2 \pi a} \left( 1 – 2 \cos \theta + \cos ^2 \theta \right) d \theta \\
\\
& = a^2 \int_{0}^{2 \pi a} \left( 1 – 2 \cos \theta + \color{red}{ \frac{1 + \cos 2 \theta}{2} } \right) d \theta \\
\\
& = a^2 \int_{0}^{2 \pi a} \left( \frac{3}{2} 2 \cos \theta + \frac{1}{2} \cos 2 \theta \right) d \theta \\
& = a^2 \left[ \frac{3}{2} \theta – 2 \sin \theta + \frac{1}{4} \sin 2 \theta \right]_{0}^{2 \pi a} \\
\\
& = a^2 \cdot 3 \pi \\
\\
& \color{red}{ = 3 \pi a^2 \cdots 【答】 }
\end{align} \)
【補足】
4行目から5行目の \( \displaystyle \cos ^2 \theta = \color{red}{ \frac{1 + \cos 2 \theta}{2} } \) の変形は,「2倍角の公式」で次数下げをします。
4. サイクロイドの拡張
大学入試で出題される,サイクロイドに関連した曲線についての解説をしていきます。
4.1 トロコイド
半径 \( a \) の円が定直線(\( x \) 軸)上を滑ることなく回転するとき,円の中心から距離 \( b \) の位置にある定点 \( P \) が描く曲線を トロコイド といいます。
トロコイドの概形は下の図の曲線 \( C \) のようになります(周期は \( 2 \pi a \))。
上の図の直角三角形 \( APB \) に注目すると
\( \displaystyle \color{red}{ x } = a \theta – b \cos \left( \theta \ – \frac{\pi}{2} \right) \color{red}{ = a \theta – b \sin \theta } \)
\( \displaystyle \color{red}{ y } = a + b \sin \left( \theta \ – \frac{\pi}{2} \right) \color{red}{ = a – b \cos \theta } \)
となるので,トロコイドの媒介変数表示は次のようになります。
トロコイドの媒介変数表示は
\( \color{red}{ \large{ \begin{cases}
\displaystyle x = a \theta – b \sin \theta \\
\displaystyle y = a – b \cos \theta
\end{cases} } } \)
※ 特に \( a = b \) のとき,点 \( P \) は円の周上にあることになるので,\( P \) が描く曲線はサイクロイドになります。
4.2 エピサイクロイド(カージオイド)
半径 \( b \) の円 \( C \) が,原点を中心とする半径 \( a \) の定円に外接しながら滑ることなく回転するとき,円 \( C \) 上の定点 \( P \) が描く曲線を エピサイクロイド(外サイクロイド)といいます。
エピサイクロイドの媒介変数表示は
\( \color{red}{ \large{ \begin{cases}
\displaystyle x = (a+b) \cos \theta – b \cos \frac{a+b}{b} \theta \\
\\
\displaystyle y = (a+b) \sin \theta – b \sin \frac{a+b}{b} \theta
\end{cases} } } \)
例えば,\( a = b \),\( a = 2b \) のときのエピサイクロイドの概形は下の図のようになります。
特に,\( a = b \) の場合の \( \color{red}{ \begin{cases}
\displaystyle x = a (2 \cos \theta – \cos 2 \theta) \\
\displaystyle y = a (2 \sin \theta – \sin 2 \theta)
\end{cases} } \) の曲線を カージオイド,または 心臓形 といいます。
また,カージオイドは極方程式では,次の式で表されます。
\( \displaystyle \color{red}{ \large{ r = a (1 + \cos \theta) } } \)
下の図は,\( a = 2 \) の場合のカージオイドを描いたものです。
4.3 ハイポサイクロイド(アステロイド)
半径 \( b \) の円 \( C \) が,原点を中心とする半径 \( a \) の定円に内接しながら滑ることなく回転するとき,円 \( C \) 上の定点 \( P \) が描く曲線を ハイポサイクロイド(内サイクロイド)といいます。
ハイポサイクロイドの媒介変数表示は
\( \color{red}{ \large{ \begin{cases}
\displaystyle x = (a-b) \cos \theta + b \cos \frac{a-b}{b} \theta \\
\\
\displaystyle y = (a-b) \sin \theta – b \sin \frac{a-b}{b} \theta
\end{cases} } } \)
例えば,\( a = 3b \),\( a = 4b \) のときのハイポサイクロイドの概形は下の図のようになります。
特に,\( a = 4b \) の場合の曲線を アステロイド,または 星芒形 といい,媒介変数表示は次のようになります。
\( \color{red}{ \begin{cases}
\displaystyle x = a \cos ^3 \theta \\
\displaystyle y = a \sin ^3 \theta
\end{cases} } \)
5. その他のいろいろな曲線
その他の大学入試で出題される曲線についての解説です。
5.1 リサージュ曲線
\( m, \ n \) を自然数として,媒介変数表示
\( \color{red}{ \large{ \begin{cases}
\displaystyle x = \sin m \theta \\
\displaystyle y = \sin n \theta
\end{cases} } } \)
で表される曲線を リサージュ曲線 といいます。
下の図の左は \( m=2, \ n=3 \),右は \( m=4, \ n=5 \) の場合のリサージュ曲線を描いたものです。
5.2 アルキメデスの渦巻線(対数螺旋)
\( a \) を正の定数として,極方程式 \( \color{red}{ r = a \theta } \ (\theta ≧ 0) \)で表される曲線を,アルキメデスの渦巻線 といいます。
下の図は,\( 0 ≦ \theta ≦ 4 \pi \) の範囲でアルキメデスの渦巻線を描いたものです。
媒介変数表示は次のようになります。
\( \color{red}{ \large{ \begin{cases}
\displaystyle x = \theta \cos \theta \\
\displaystyle y = \theta \sin \theta
\end{cases} } } \)
5.3 正葉曲線
\( n \) を自然数として,極方程式 \( \color{red}{ r = \sin n \theta } \ (\theta ≧ 0) \)で表される曲線を,正葉曲線 といいます。
下の図は,\( n = 2 \) の場合の正葉曲線を描いたものです。
6. おわりに
以上がサイクロイドと,大学入試で出題される曲線の解説です!
すべての曲線の媒介変数表示を暗記する必要はありませんが,サイクロイド・カージオイド・アステロイドは頻出の媒介変数表示なので,概形と媒介変数表示は覚えておきましょう。
サイクロイドの面積の式3行目の積分範囲が置換前に戻るのはなぜですか?