東大塾長の山田です。
このページでは、「極方程式」について解説します。
今回は,極座標・極方程式についてはじめから丁寧に解説していきます。さらに,難関大で使うことがある「極方程式の面積公式」についても解説します。
ぜひ勉強の参考にしてください!
1. 極座標
「極方程式」についてわかりやすく解説していくために,順を追って,まずは「極座標」の解説からしていきます。
「極座標はわかるから極方程式の解説から見たい」という人は,「2. 極方程式」から読み進めてください。それでは始めていきます。
1.1 極座標とは?
平面上に点 \( O \) と,半直線 \( OX \) を定めます。
平面上の任意の点 \( P \) の位置は,\( O \) からの距離 \( r \) と \( OX \) を始線とする動径 \( OP \) の表す角 \( \theta \) で定めることができます。
このとき,\( (r, \ \theta) \) を点 \( P \) の 極座標 といい,定点 \( O \) を 極,角 \( \theta \) を 偏角 といいます。
極座標では,\( (r, \ \theta) \) と \( (r, \ \theta + 2n \pi) \) は同じ点を表しますが,極座標による点の表し方を1通りにするために,偏角 \( \theta \) を例えば \( 0 ≦ \theta ≦ 2 \pi \) とすることがあります。
【例】
例えば,極座標 \( \displaystyle \left( 2, \ \frac{\pi}{3} \right) \) と \( \displaystyle \left( 2, \ \frac{7}{3}\pi \right) \) は同じ点を表します。
1.2 極座標と直交座標
極座標に対して,小学校から今までこれまで使ってきた \( (x, \ y) \) で表された座標を 直交座標 といいます。
極座標を考えるときは,ふつう,原点 \( O \) を極,\( x \) 軸の正の部分を始線とします。
すると,極座標と直交座標の関係は次のようになることがわかります。
1.3 極座標での2点間の距離
極座標での2点間の距離は次のようになります。
\( O \) を極とする2点 \( A(r_1, \ \theta_1) \),\( B(r_2, \ \theta_2) \) の2点\( A, \ B \) 間の距離は
\( \displaystyle \color{red}{ AB = \sqrt{ {r_1}^2 + {r_2}^2 – 2 r_1 r_2 \cos (\theta_2 – \theta_1) } } \)
長々としてわかりずらいかもしれませんが,これは 余弦定理 \( \color{red}{ c^2 = a^2 + b^2 – 2ab \cos C } \) そのものです!
図示すると次のようになります。
\( \triangle OAB \) は \( \angle AOB = |\theta_2 – \theta_1| \),\( OA = r_1 \),\( OB = r_2 \) となるので,余弦定理より
\( AB^2 = {r_1}^2 + {r_2}^2 – 2 r_1 r_2 \cos (\theta_2 – \theta_1) \)
\( \displaystyle ∴ \ \color{red}{ AB = \sqrt{ {r_1}^2 + {r_2}^2 – 2 r_1 r_2 \cos (\theta_2 – \theta_1) } } \)
【補足】
厳密には \( \angle AOB = |\theta_2 – \theta_1| \) ですが,\( \cos (\theta_2 – \theta_1) = \cos (\theta_1 – \theta_2) \) なので,絶対値をつけなくても大丈夫です。
1.4 極座標での三角形の面積
極座標での三角形の面積は次のようになります。
\( O \) を極とする2点 \( A(r_1, \ \theta_1) \),\( B(r_2, \ \theta_2) \) があるとき,\( \triangle OAB \) の面積 \( S \) は
\( \displaystyle \color{red}{ \large{ S = \frac{1}{2} r_1 r_2 | \sin (\theta_2 – \theta_1) | } } \)
この式も,先ほどの2点間の距離のときと同様に考えると,三角比の面積公式 \( \displaystyle \color{red}{ S = \frac{1}{2} ab \sin C } \) そのものです。
2. 極方程式
それでは,今回の本題である「極方程式」の解説に入ります。
2.1 極方程式とは?
平面上の曲線が,極座標 \( (r, \ \theta) \) を用いた式
\( \displaystyle \color{red}{ r = f (\theta) } \) または \( \displaystyle \color{red}{ F(r, \ \theta) = 0 } \)
で表されるとき,この方程式を,その曲線の 極方程式 といいます。
2.2 直線・円の極方程式一覧
直線や円の極方程式は次のようになります。
【直線の極方程式】
[1] 極 \( O \) を通り,始線とのなす角が \( \alpha \) の直線
\( \displaystyle \color{red}{ \large{ \theta = \alpha } } \)
[2] 点 \( A(a, \ \alpha) \) を通り,\( OA \) に垂直な直線
\( \displaystyle \color{red}{ \large{ r \cos (\theta \ – \alpha) = a } } \ (a>0) \)
【円の極方程式】
[3] 中心が極 \( O \),半径が \( a \) の円
\( \displaystyle \color{red}{ \large{ r= a } } \)
[4] 中心が \( (a, \ 0) \),半径が \( a \) の円
\( \displaystyle \color{red}{ \large{ r = 2a \cos \theta } } \)
[5] 中心が \( (r_0, \ \theta _0) \),半径が \( a \) の円
\( \displaystyle \color{red}{ \large{ r^2 – 2r r_0 \cos (\theta \ – \theta _0) + {r_0}^2 = a^2 } } \)
次のセクションから,具体例をあげながらそれぞれ詳しく解説していきます。
3. 直線の極方程式
まずは直線の極方程式の解説です。
[1] 極 \( O \) を通り,始線とのなす角が \( \alpha \) の直線
例えば
点 \( P(r, \ \theta) \) が極方程式 \( \displaystyle \theta = \frac{\pi}{3} \) を満たすとき
偏角は \( \displaystyle \frac{\pi}{3} \) で一定だから,極方程式 \( \displaystyle \theta = \frac{\pi}{3} \) で表される図形は,極 \( O \) を通り,始線となす角が \( \displaystyle \theta = \frac{\pi}{3} \) の直線です。
これを一般的にすると,極 \( O \) を通り,始線とのなす角が \( \alpha \) の直線 上の点 \( P \) の極座標を \( (r, \ \theta) \) とすると,\( \theta = \alpha \) は一定で,\( r \) は任意の値をとります。
よって \( \displaystyle \color{red}{ \large{ \theta = \alpha } } \)
[2] 点 \( A(a, \ \alpha) \) を通り,\( OA \) に垂直な直線
点 \( A(a, \ \alpha) \ (a>0) \) を通り,\( OA \) に垂直な直線 上の点 \( P \) の極座標を \( (r, \ \theta) \) とします。
上の図より
\( OA = OP \cos \angle POA \)
\( ∴ \ \color{red}{ \large{ r \cos (\theta \ – \alpha) = a } } \)
となります。
ここで例題をやってみましょう。
極座標が \( \displaystyle \left( 1, \ \frac{\pi}{6} \right) \) である点 \( A \) を通り,\( OA \)に垂直な直線の極方程式を求めよ。
【解答】
求める直線上の点を \( P(r, \ \theta) \) とすると,次のように図示できます。
\( \triangle OAP \) は直角三角形だから
\( OP \cos \angle AOP = OA \)
\( \displaystyle ∴ \ \color{red}{ r \cos \left( \theta \ – \frac{\pi}{6} \right) = 1 \cdots 【答】 } \)
- 極方程式を求める問題では,まず,図形上の点\( P \) の極座標を\( (r, \ \theta) \) とおきます。
- 必ず問題を図示して,イメージを持てるようにしましょう。
3. 円の極方程式
続いて円の極方程式の解説です。
[3] 中心が極 \( O \),半径が \( a \) の円
中心が極 \( O \),半径が \( a \) の円 周上の点点 \( P \) の極座標を \( (r, \ \theta) \) とします。
上の図より,\( r = a \) で一定で,\( \theta \) は任意の値をとります。
したがって,円の極方程式は
\( \displaystyle \color{red}{ \large{ r= a } } \)
となります。
[4] 中心が \( (a, \ 0) \),半径が \( a \) の円
中心が \( (a, \ 0) \),半径が \( a \) の円 周上の点 \( P \) の極座標を \( (r, \ \theta) \) とします。
上の図で,\( \triangle POB \) は直角三角形だから
\( OP = 2 OA \cos \angle AOP \)
\( \displaystyle \color{red}{ \large{ r = 2a \cos \theta } } \)
となります。
具体的に問題を解いてみましょう。
極 \( O \) を通り,中心 \( \displaystyle A ( 3, \ 0) \) の円の極方程式を求めよ。
【解答】
求める円周上の点を \( P(r, \ \theta) \) とすると,次のように図示できます。
\( \triangle POB \) は直角三角形だから
\( OP = OB \cos \angle BOP \)
\( \displaystyle \color{red}{ r = 6 \cos \theta \cdots 【答】 } \)
[5] 中心が \( (r_0, \ \theta _0) \),半径が \( a \) の円
中心が \( C(r_0, \ \theta _0) \),半径が \( a \) の円 周上の点 \( P \) の極座標を \( (r, \ \theta) \) とします。
上の図で,\( \triangle OCP \) において,余弦定理より
\( PC^2 = OP^2 + OC^2 – 2 OP \cdot OC \cos \angle COP \)
\( \displaystyle ∴ \ a^2 = r^2 + {r_0}^2 – 2 r r_0 \cos (\theta \ – \theta_0) \)
これを整理して
\( \displaystyle \color{red}{ \large{ r^2 – 2r r_0 \cos (\theta \ – \theta _0) + {r_0}^2 = a^2 } } \)
となります。
具体的に問題を解いてみましょう。
中心が \( \displaystyle A \left( 2, \ \frac{\pi}{3} \right) \),半径が \( 1 \) の円の極方程式を求めよ。
【解答】
\( O \) を極とし,求める円周上の点を \( P(r, \ \theta) \) とすると,次のように図示できます。
\( \triangle OAP \) において,余弦定理より
\( PA^2 = OP^2 + OA^2 – 2 OP \cdot OA \cos \angle AOP \)
\( \displaystyle ∴ \ 1^2 = r^2 + 2^2 – 2 \cdot r \cdot 2 \cos \left( \theta \ – \frac{\pi}{3} \right) \)
よって
\( \displaystyle \color{red}{ r^2 – 4 r \cos \left( \theta \ – \frac{\pi}{3} \right) + 3 = 0 \cdots 【答】 } \)
5. 2次曲線の極方程式
離心率が \( e \) である2次曲線の極方程式について考えましょう。
下の図のように,原点 \( O \) を1つの焦点にもつ2次曲線の準線を \( l:x = -a \),原点 \( O \) を極,\( x \) 軸の正の部分を始線とします。また,2次曲線上の任意の点の極座標を \( P(r, \ \theta) \) として,\( P \) から準線 \( l \) に引いた垂線の足を \( H \) とします。
離心率が \( e \) であるから
\( PO:PH = e:1 \)
\( ∴ \ PO = e PH \)
\( PO = r \),\( PH = a + r \cos \theta \) であるから
\( r = e (a + r \cos \theta) \)
よって,2次曲線の極方程式は
\( \displaystyle \ \color{red}{ \large{ r = \frac{ea}{1 – e \cos \theta} } } \)
【補足】
今回は準線 \( l \) が極の左側でしたが,準線 \( l \) が極の右側の場合について同様に考えると,2次曲線の極方程式は
\( \displaystyle \ \color{red}{ \large{ r = \frac{ea}{1 + e \cos \theta} } } \)
となります。
上の式において,
・\( \color{red}{ 0 < e < 1 } \) のとき → 楕円
・\( \color{red}{ e = 1 } \) のとき → 放物線
・\( \color{red}{ e > 1 } \) のとき → 双曲線
以上のように,曲線の種類に関係なく1つの方程式で表すことができることが,極方程式の利点の1つです。
6. 極方程式の面積公式【発展】
極方程式で表された曲線の面積は,定積分で次のように求めることができます。
極方程式 \( r = f (\theta) \ (\alpha ≦ \theta ≦ \beta) \) で表される曲線上の点と極 \( O \) を結んだ線分が通過する領域の面積は
\( \displaystyle \color{red}{ \large{ S = \frac{1}{2} \int_{\alpha}^{\beta} r^2 d \theta } } \)
なぜこの公式が成り立つのかイメージが湧くように,簡単に説明します。
【簡単な証明】
下の図のように,偏角が\( \theta \) から \( \Delta \theta \) まで変化したときの,面積 \( S \) の増分 \( \Delta S \) を考えると,\( \Delta \theta \) が十分に小さいとき,\( \Delta S \) は半径 \( r \),中心角 \( \Delta \theta \) の扇形とみなすことができます。
よって
\( \displaystyle \Delta S = \frac{1}{2}r^2(\Delta \theta) \)
これを \( \theta = \alpha \) から \( \beta \) まで積分すると,求めたい面積が求められるので
\( \displaystyle \color{red}{ S } = \int_{\alpha}^{\beta} \frac{1}{2}r^2 d \theta \color{red}{ = \frac{1}{2} \int_{\alpha}^{\beta} r^2 d \theta } \)
※ 厳密な証明は,「定積分で面積が求める理由」での解説と同様に,はさみうちの原理 を使ってまったく同じように証明することができます。
この公式を使うことで,媒介変数表示の曲線や,極方程式で表された曲線の面積の問題を,かなり計算の手間を削減して求めることができます。
7. おわりに
以上が 極座標・極方程式 の解説です。
極方程式の問題は,まず,図形上の点 \( P \) の極座標を\( (r, \ \theta) \) とおいて,図示してイメージをもつことが重要です。
数Ⅲは理系学生の合否を分ける分かれ道にもなるので,この記事を参考にして極方程式をきっちりマスターしてください!
点 \( P \) の直交座標を \( (x, \ y) \),極座標を \( (r, \ \theta) \) とすると
\( ① \begin{cases}
\displaystyle x = r \cos \theta \\
\displaystyle y = r \sin \theta
\end{cases} \)
\( \displaystyle ② \begin{cases}
\displaystyle r = \sqrt{ x^2 + y^2 } \\
\displaystyle \cos \theta = \frac{x}{r}, \ \ \sin \theta = \frac{y}{r} \ (r \neq 0)
\end{cases} \)