東大塾長の山田です。
このページでは、「正弦定理と余弦定理の証明」について解説します。
正弦定理と余弦定理は、高校数学では非常に重要な公式です。
ど忘れや知識の曖昧さをなくすためにも、証明は絶対に知っておくべきです。
また、入試で公式の証明をする問題が出題されることもあるので、この記事を通して導き方を理解しておきましょう!
1. 正弦定理の公式
三角形ABCの外接円の半径をRとしたとき、
\( \displaystyle \color{red}{ \large{ \frac{a}{\sin A} = \frac{b}{\sin B} = \frac{c}{\sin C} = 2R } } \)
2. 正弦定理の証明
\( \displaystyle \frac{a}{\sin A}=2R \) について証明します。
\( \angle B , \ \angle C \) についても同様のやり方で証明できます。
次の3つの場合
・(i) ∠Aが鋭角のとき
・(ii) ∠Aが直角のとき
・(iii) ∠Aが鈍角のとき
これら3つの場合をすべて証明すれば、「∠Aがどんなときでも正弦定理は成り立つ」ことになります。
※ このように、証明は「常に」、「どんな場合でも」成り立つことを示す必要があります。
それでは(i)から順にやっていきます。
(i) ∠Aが鋭角のとき
右側の図で \( \displaystyle \sin A’ = \frac{a}{2R} \)
また、円周角の定理より \( \angle A = \angle A’ \) なので、
\( \displaystyle \frac{a}{\sin A} = 2R \)
(ii) ∠Aが直角のとき
\( \angle A = 90^\circ \) のとき、上の図より
\( \displaystyle a = 2R \)
\( \displaystyle ∴ \ \frac{a}{2R} = 1 \)
となります。
また \( \sin 90^\circ = 1 \) なので
\( \displaystyle \frac{a}{2R} = \sin90^\circ \)
\( \displaystyle ∴ \ \frac{a}{\sin90^\circ} = 2R \)
つまり「\( \displaystyle \frac{a}{\sin A} = 2R \)」は \( \angle 90^\circ \) のときでも成り立つ、ということです。
(iii) ∠Aが鈍角のとき
四角形ABA’Cは円に内接しているので、内接四角形の性質より、
\( \begin{align}
\displaystyle \angle A + \angle A’ & = 180^\circ \\
\\
∴ \ \angle A’ & = 180^\circ – \angle A
\end{align} \)
よって、\( \sin A’ = \sin (180^\circ-A) \)
\( 180^\circ-\theta \)の変換公式より、
\( \displaystyle \sin (180^\circ-A) = \sin A \)
したがって \( \sin A’ = \sin A \ \cdots ① \)
また、△A’BCに着目すると
\( \begin{align}
\displaystyle \sin A’ & = \frac{a}{2R} \\
\\
∴ \ \frac{a}{\sin A’} & = 2R \ \cdots ②
\end{align} \)
①,②より
\( \displaystyle \frac{a}{\sin A} = 2R \)
以上、(i)~(iii)より
\( \displaystyle \color{red}{ \large{ \frac{a}{\sin A} = 2R } } \)
が示せました。
\( \angle B , \ \angle C \) についても同様に証明することで、正弦定理
\( \displaystyle \color{red}{ \large{ \frac{a}{\sin A} = \frac{b}{\sin B} = \frac{c}{\sin C} = 2R } } \)
が示せます。
3. 余弦定理
\( \displaystyle ・ \ \color{red}{ \large{ a^2 = b^2 + c^2 – 2bc \cos A } } \)
\( \displaystyle ・ \ \color{red}{ \large{ b^2 = c^2 + a^2 – 2ca \cos B } } \)
\( \displaystyle ・ \ \color{red}{ \large{ c^2 = a^2 + b^2 -2ab \cos C } } \)
4. 余弦定理の証明
正弦定理と同様に
・(i) ∠Aが鋭角のとき
・(ii) ∠Aが直角のとき
・(iii) ∠Aが鈍角のとき
の3つの場合に分けて証明します。
(i) ∠Aが鋭角のとき
△ABHに着目すると
\( \displaystyle AH = c \cdot \cos A, \ \ BH = c \cdot \sin A \)
次に、△BCHで三平方の定理を適用すると、
\( \begin{align}
\displaystyle BC^2 & = BH^2 + CH^2 \\
\\
∴ a^2 & = (c \cdot \sin A)^2 + (b- c \cdot \cos A)^2 \\
\\
& = c^2\sin^2 A + b^2 – 2bc \cdot \cos A + c^2 \cos^2 A \\
\\
& = c^2 (\sin^2 A + \cos^2 A) + b^2 – 2bc \cdot \cos A \\
\\
& = c^2 \cdot 1 + b^2 – 2bc \cdot \cos A
\end{align} \)
\( \displaystyle ∴ \ a^2 = b^2 + c^2 – 2bc \cos A \)
(ii) ∠Aが直角のとき
\( \angle A = 90^\circ \) のとき、「余弦定理は三平方の定理そのもの」といえます。
上の図で、三平方の定理より、
\( a^2 = b^2 + c^2 \)
であり、\( \cos A = \cos 90^\circ = 0 \) なので、
\( \displaystyle a^2 = b^2 + c^2 – 2bc \cos A \)
が成り立っています(\( \cos A=0 \) だから)。
(iii) ∠Aが鈍角のとき
上の図で、
\( \displaystyle BH = c \cdot \sin (180^\circ-A) = c \sin A \)
\( \displaystyle AH = c \cdot \cos (180^\circ-A) = -c \cos A \)
次に、△BCHで三平方の定理を適用すると、
\( \begin{align}
\displaystyle BC^2 & = BH^2 + CH^2 \\
\\
& = BH^2 + (AC + AH)^2 \\
\\
∴ a^2 & = (c \sin A)^2 + (b-c \cos A)^2 \\
\\
& = c^2\sin^2 A + b^2 – 2bc \cdot \cos A + c^2 \cos^2A \\
\\
& = c^2 (\sin^2 A + \cos^2 A) + b^2 – 2bc \cdot \cos A \\
\\
& = c^2 \cdot 1 + b^2 – 2bc \cdot \cos A
\end{align} \)
\( \displaystyle ∴ \ a^2 = b^2 + c^2 – 2bc \cos A \)
以上、(i)~(iii)より
\( \displaystyle \color{red}{ \large{ a^2 = b^2 + c^2 – 2bc \cos A } } \)
が示せました。
他の2つの式ついても、同様に証明することができます。
5. 正弦定理と余弦定理の証明まとめ
正弦定理と余弦定理の証明のやり方は理解できましたか?
公式の導き方が頭に入っていれば、うろ覚えやど忘れもなくなり、いつでも自分で公式を導ける状態になれます。
入試問題で公式の証明が出題されることもあるので、しっかりとおさえておきましょう!
余弦定理の証明で(ⅲ)Aが鈍角のときの図中にHが抜けている