東大塾長の山田です。
このページでは、「背理法」の説明とやり方を、例題を解説しながら示していきます。
たくさんの例題をやってみせますので、背理法のやり方がしっかりとイメージできるようになります。
このページを最後まで読んで、「背理法」のやり方を理解して、背理法の証明問題をマスターしてください!
1. 背理法とは?
1.1 背理法の解説と背理法の使いどころ
背理法とは、「命題Aを証明するのに、命題Aが成り立たないと仮定すると矛盾が導かれること示すことで、命題Aが成り立つと証明する方法」のことです。
背理法は、直接示すことが困難なときに使い、間接的に証明する方法です。
「~である(=~でない)」を証明するのに特に有効である、ということを覚えておきましょう。
例えば、「~は無理数である(=有理数でない)ことを証明しなさい」という問題が特に代表的です。
1.2 背理法の証明の流れ
背理法は以下の流れで証明を進めていきます。
- 「命題\( A \)」を証明したい。
- 「命題Aが成り立たない(\( \overline{A} \)が成り立つ)」と仮定する。
- 「命題Aが成り立たない(\( \overline{A} \)が成り立つ)」という仮定が矛盾することを、計算や推論で導く。
- よって「矛盾があるので仮定は間違いである!」となる。
- したがって「命題Aは正しい」と結論付ける。
次は問題を使って、背理法のやり方を具体的に解説していきます。
2. 背理法による証明問題①「\( x \)が無理数\( \Rightarrow 2x+1 \)が無理数」
この問題は、無理数である(=有理数でない)ことを直接示すのは困難です。
そこで「直接がだめなら間接で背理法」を使います。
背理法で次のような流れで証明していきます。
- 「\( 2x+1 \)が無理数でない」と仮定する。
- つまり「\( 2x+1 \)が有理数である」。
- ①の仮定が矛盾することを計算で導く。
- 矛盾が生じたから、①の仮定は間違っている。
- よって「\( 2x+1 \)が無理数である」が成り立つ。
それでは、さっそく解答を書いていきます。
\( 2x+1 \)が無理数でないと仮定する。
このとき、\( 2x+1 \)は有理数であるから、\( r \)を有理数として、\( 2x+1 = r \)とおくと
\[ \begin{align}
2x+1 & = r \\
\\
2x & = r-1 \\
\\
x & = \frac{r-1}{2} \cdots ①
\end{align} \]
\( r-1 \)は有理数だから、①の右辺も有理数である。
よって、①から\( x \)は有理数となり、\( x \)が無理数であることに矛盾する。
したがって、\( 2x+1 \)は無理数である。
3. 背理法による証明問題②「有理数と無理数との和は無理数」
有理数と無理数との和は無理数であることを、背理法を用いて証明せよ。
流れは先ほどと同じです。
【命題は成り立たないと仮定する】→【計算で矛盾を導く】の流れをつかみましょう。
有理数と無理数の和が無理数でないと仮定する。
このとき、有理数と無理数の和は有理数である。
\( a,b \)を有理数、\( \alpha \)を無理数とすると、
\[ \begin{align}
a + \alpha & = b \\
\\
\alpha & = b-a \cdots ①
\end{align} \]
①の左辺は無理数、右辺は有理数となり、矛盾する。
したがって、有理数と無理数の和は無理数である。
※補足…①の右辺「\( b-a \)」は「(有理数)-(有理数)」なので、有理数といえます。
4. 背理法による証明問題③「\( \sqrt{ 3 } \)は無理数」
\( \sqrt{ 3 } \) は無理数であることを証明せよ。
この問題は大学受験では頻出なので、パターンを覚えてしまいましょう。
それでは証明をしていきます。
\( \sqrt{3} \) を無理数でないと仮定する。
このとき、\( \sqrt{3} \)は有理数であり、互いに素な自然数 \( a,b \) を用いて
\[ \sqrt{3} = \frac{a}{b} \]
と表される。
このとき、\( a = \sqrt{3}b \)
両辺を2乗して、\( a^2 = 3b^2 \cdots ①\)
よって、\( a^2 \)は3の倍数であるから、\( a \)も3の倍数である。
ゆえに、\( c \)を自然数として、\( a = 3c \) と表される。
\( a = 3c \) を①に代入して、\( 9c^2 = 3b^2 \)
すなわち、\( b^2 = 3c^2 \)
よって、\( b^2 \) は3の倍数であるから、\( b \)も3の倍数である。
したがって、\( a \) と \( b \) は公約数3をもつことになる。
これは、\( a \) と \( b \) が互いに素であることに矛盾する。
よって、\( \sqrt{3} \) は無理数である。
※ \( a,b \) が互いに素…1以外に公約数をもたない。
5. 背理法による証明問題④「\( \sqrt{5} + \sqrt{7} \)は無理数」
\( \sqrt{5} + \sqrt{7} \) は無理数であることを証明せよ。
この証明のやり方は例題①とほぼ同じです。
\( \sqrt{5} + \sqrt{7} \) は無理数でないと仮定する。
このとき、\( \sqrt{5} + \sqrt{7} \) は有理数であるから、\( r \)を有理数として、\( \sqrt{5} + \sqrt{7} = r \) とおくと、
\( \sqrt{5} = r- \sqrt{7} \)
両辺を2乗して \( 5 = r^2-2\sqrt{7}r+7 \)
ゆえに \( 2\sqrt{7}r = r^2+2 \)
\[ r \neq 0 \ なので \ \sqrt{7} = \frac{r^2+2}{2r} \cdots ① \]
\( r^2+2, \ 2r \) は有理数であるから、①の右辺も有理数である。
よって、①から\( \sqrt{7} \) は有理数となり、\( \sqrt{7} \) が無理数であることに矛盾する。
したがって、\( \sqrt{5} + \sqrt{7} \) は無理数である。
背理法のやり方や流れは掴めてきましたか?
残り2問です!
6. 背理法による証明問題⑤「少なくとも1つは~」
整数 \( a,b,c \) が \( a^2+b^2=c^2 \) を満たすとき、\( a,b,c \) のうち少なくとも1つは偶数であることを証明せよ。
例題⑤は、「少なくとも1つは~」を証明する問題です。
「少なくとも1つは~」を証明する問題も背理法の定番パターンです。
それではやっていきます。
\( a,b,c \) すべてが偶数でないと仮定する。
このとき、\( a,b,c \) はすべて奇数となるので、整数 \( l,m,n \) を用いて
\( a = 2l+1, b = 2m+1, c = 2n+1 \)と表される。
これらを \( a^2+b^2=c^2 \) に代入すると
\[ \begin{align}
& ( 2l+1 )^2 + (2m+1)^2 = (2n+1)^2 \\
\\
& ( 4l^2 + 4l +1 ) + ( 4m^2 + 4m + 1 ) = 4n^2 + 4n +1 \\
\\
& 4l^2 + 4l + 4m^2 + 4m + 1 = 4n^2 + 4n \\
\\
& 2( 2l^2 + 2l + 2m^2 + 2m ) + 1 = 2( 2n^2 +2n ) \cdots ①
\end{align} \]
\( 2l^2 + 2l + 2m^2 + 2m, \ \ 2n^2 +2n \) は整数であるので、
①の左辺は奇数、右辺は偶数となり、矛盾する。
したがって、\( a,b,c \) のうち少なくとも1つは偶数である。
※画面から切れてしまっていたら横スクロールして下さい。
7. 背理法による証明問題⑥「\( a+b\sqrt{5}=0 \Rightarrow a=b=0 \)」
\( a,b \) が有理数のとき、\( a+b\sqrt{2}=0 \) ならば \( a=b=0 \) であることを証明せよ。ただし、\( \sqrt{2} \) は無理数である。
最後の問題です!やっていきます。
\( b \neq 0 \)と仮定する。
\[ a+b\sqrt{2}=0 より \sqrt{2} = -\frac{a}{b} \cdots ① \]
\( a,b \)は有理数だから、①の左辺は無理数、右辺は有理数となり、矛盾する。
よって、\( b=0 \) である。
\( a+b\sqrt{2}=0 \) に \( b=0 \) を代入すると、
\( a + 0 \cdot \sqrt{2} = 0 \) より \( a=0 \)
したがって、\( a,b \)が有理数のとき、
\( a+b\sqrt{2}=0 \) ならば \( a=b=0 \)である。
8. 背理法のまとめ
さいごに、背理法のまとめをします。
- 背理法…命題Aを証明するのに、命題Aが成り立たないと仮定すると矛盾が導かれること示すことで、命題Aが成り立つと証明する方法。
- 背理法を使う問題…背理法は、直接示すことが困難なときに使い、間接的に証明する。
- 「~である(=~でない)」の証明
- 「少なくとも1つは~」の証明
- 背理法の証明の流れ…
- 「命題\( A \)」を証明したい。
- 「命題Aが成り立たない(\( \overline{A} \)が成り立つ)」と仮定する。
- 「命題Aが成り立たない(\( \overline{A} \)が成り立つ)」という仮定が矛盾することを、計算や推論で導く。
- よって「矛盾があるので仮定は間違いである!」となる。
- したがって「命題Aは正しい」と結論付ける。
以上が背理法の解説です。
「背理法とはなにか、どのように使うか」を理解できましたか?
大学入試では証明の問題は頻出ですので、背理法は必ずマスターしなければいけないものです。
このページを何度も読んで理解して、練習を積み重ねて、背理法をマスターしてください!
実数\( x \)が無理数であるとき、\( 2x+1 \)が無理数であることを証明せよ。