物理にも使える!微分方程式の解法まとめ

東大塾長の山田です。

このページでは、物理にも応用できる微分方程式の解法について詳しくまとめています。

微分方程式にはいろんな種類がありますが、この記事においては特に「高校物理で出てくる」微分方程式について説明していきます。

ぜひ勉強の参考にしてください!

1. 微分方程式とは

1.1 微分方程式とは

微分方程式とは何かについて説明します。

\(y\)が\(x\)の関数のとき、\(x\)と\(y\)及び\(y’\)の導関数を含む方程式のことを「常微分方程式」といいます。

また、このような方程式が与えられた場合、これを満たす\(x\)の関数\(y\)を、その微分方程式の解といい、これを求めることを「微分方程式を解く」といいます。

例えば以下のようなものは微分方程式ということができます。

【例】 

\(y’=\left(\displaystyle\frac{dy}{dx}\right)=x+y\)

\(y”+y’+x=e^x\)

補足

微分方程式において、その中の微分の最高次数をその微分方程式の「階数」といいます。

上の例でいえば、\(y’=\left(\displaystyle\frac{dy}{dx}\right)=x+y\)は一階の微分方程式、\(y”+y’+x=e^x\)は二階の微分方程式といえます。

1.2 微分方程式のメリット

微分方程式を理解することのメリットの一つに、「公式を丸暗記しなくてもすむ」というものがあります。

物理自体、覚える公式は多くありませんが紛らわしい形・覚えづらい形をしたものも多く存在します。(例:単振動の変位・速度・加速度)

【単振動】

変位:\(x=A \sin (\omega t+\alpha)\)

速度:\(v=\omega A\cos(\omega t+\alpha)\)

加速度:\(a=-{\omega}^2 A \sin (\omega t+\alpha)=-{\omega}^2 x\)

もし試験中を理解して置けば、形があいまいな場合などに簡単に導出することで間違いを防ぐこともできます。

さらに、微分方程式を理解することで物理現象について深く理解することが可能になります。運動・状態方程式は微分方程式であり、それを解くことで運動・現象に関してのグラフを書くことができ、どのような挙動を示すのかを確認することができます。

このように、間違いを防ぐためにも理解を深めるためにも微分方程式を理解することが不可欠です!

以下では、高校物理で用いられる微分方程式において、まずはそれ自体の説明を行った後、物理への応用を紹介したいと思います。

2. 直接積分形の解法

2.1 直接積分形とは

\[\displaystyle\frac{dy}{dx}=f(x)\]

の形の微分方程式を「直接微分形」といいます。

これはもっとも簡単な積分形であり、両辺を積分するだけで解くことができます。

2.2 解法

詳しく解法をまとめてみましょう。

① \(\displaystyle\frac{dy}{dx}=f(x)\cdots (※)\)の形にする。

②  (※)の両辺を\(x\)で積分する。

\(y=\displaystyle\int f(x) dx=F(x)+C\quad (C=\rm{const.})\)

③初期条件\(y(a)=b\)により\(C\)を決定する。

\[b=F(a)+C\quad ∴C=b-F(a)\]

より

\[y=F(x)+b-F(a)\]

となる。(これを特殊解といいます。)

2.3 例題

例題を解いてみましょう!

例題

(1) \(\displaystyle\frac{dy}{dx}=2(x+1)\)の一般解を求め、初期条件\(y(0)=1\)を満たす特殊解を求めよ。

(2) \(xy’=2\)の一般解を求め、初期条件\(y(1)=1\)を満たす特殊解を求めよ。

簡単な手順で解けますね、それでは解答です!

【解答】

(1) 両辺に\(x\)を掛け、\(x\)で積分します。

\[\begin{aligned}y&=\int 2(x+1) dx\\&=2\left(\displaystyle\frac{x^2}{2}+x\right)+C\\\end{aligned}\]

初期条件\(y(0)=1\)より

\[\left. y \right|_{x=0} =C=1\]

よって求める解は

\[y=x^2+2x+1\]

 

(2) 手順は全く同じなので計算式のみ示します。

\[y’=\displaystyle\frac{2}{x}\] \[\begin{aligned}y&=\int \displaystyle\frac{2}{x} dx\\&=2\log|x|+C\\\end{aligned}\]

\(y(1)=1\)より、\(C=1\)

よって求める解は

\[y=2\log |x|+1\]

3. 変数分離形(一階微分方程式)の解法

次に変数分離形について説明します!

3.1 変数分離形とは

\[\displaystyle\frac{dy}{dx}=f(x)g(y)\]

のように右辺が\(x\)の式と\(y\)の式の積の形の微分方程式を「変数分離形」といいます。

【例】 \(\displaystyle\frac{dy}{dx}=2xy\)は変数分離形の微分方程式となります。

\(f(x)=2x,g(y)=y\)と考えればよいです。

\(\displaystyle\frac{dy}{dx}=x^2+4x+y^2,\quad \displaystyle\frac{dy}{dx}=2x-9y\)

などは変数分離形とはいえません。右辺を\(x\)の式と\(y\)の式の積の形にできないからです。

また、\(\displaystyle\frac{dy}{dx}=\displaystyle\frac{y}{2x}\)は変数分離形ということができます。

3.2 解法

それでは解法です。

変数分離形の解法

① \(\displaystyle\frac{dy}{dx}=f(x)g(y)\)の両辺を、\(g(y)≠0\)として\(g(y)\)で割って

\(\displaystyle\frac{1}{g(y)}\displaystyle\frac{dy}{dx}=f(x)\cdots (※)\)

② (※)の両辺を\(x\)で積分する。

\(\quad\int \displaystyle\frac{1}{g(y)}\displaystyle\frac{dy}{dx}dx\)
\(⇔\displaystyle\int \displaystyle\frac{1}{g(y)} dy=\int f(x) dx\)

よって

\(G(y)=F(x)+C\)

③ 初期条件\(y(x)=b\)を用いて\(C\)を決定し、特殊解を求める。

3.3 例題

例題を解いてみて解き方を確認してみましょう。

【例】微分方程式\(\displaystyle\frac{dy}{dx}=2xy\)を解いてみましょう。

\(y≠0\)として両辺を\(y\)で割ると

\(\displaystyle\frac{1}{y}\displaystyle\frac{dy}{dx}=2x\cdots①\)

①の両辺を\(x\)で積分して

\(\quad\displaystyle\int \left(\displaystyle\frac{1}{y}\displaystyle\frac{dy}{dx}\right) dx=\displaystyle\int 2x dx\)
\(∴\displaystyle\int\displaystyle\frac{1}{y}dy=\int 2x dx\)

よって

\(\log |y|=x^2+C_1 \quad (C_1=\rm{const.})\)

したがって

\(y=e^{x^2+C_1}\quad ∴y=±e^{x^2+C_1}=±e^{C_1}\times e^{x^2}\)

そこで、\(±e^{C_1}=C\)と置き換えると

\(y=Ce^{x^2}\quad (C≠0)\cdots②\)

また、\(y=0\)のときは、\(\displaystyle\frac{dy}{dx}=0\)となり、微分方程式を満たすことが分かります。

したがって\(y=0\)も解となるので、②において\(C=0\)とすれば\(y=0\)が得られます。

ゆえに\(C\)を「任意定数」として、\(y=Ce^{x^2}\)の形ですべての解が表されることが分かります。よって求める一般解は

\(y=Ce^{x^2}\)

4. 二階微分方程式の解法

4.1 二階微分方程式とは

今回は高校物理で登場する、\(x\)の関数\(y\)と、その二階微分量\(\displaystyle\frac{d^2 y}{dx^2}\)の間に

\(\displaystyle\frac{d^{2} y}{d x^{2}}+a^{2} y=0 \quad \Leftrightarrow \quad \displaystyle\frac{d^{2} y}{d x^{2}}=-a^{2} y\)

が成り立つ場合について考えてみます。

4.2 解法

これについては一般解の形を覚えてしまうのが早いです。覚えるといっても理解して頭に入れていくイメージです。

先ほどの一階微分方程式においては任意定数は1つだけ登場してきました。そこから二階微分方程式を解く際には、任意定数は2個必要だろうということが分かります。

また、上の微分方程式に\(x=\sin ax,\cos ax\)を代入すると成り立つことことを合わせて考えると

\(y=C_1 \sin ax+C_2 \cos ax\)

が一般解となることが分かります。(\(\sin ax, \cos ax\)は基本解と呼ばれます。)

次に、三角関数の合成を用います。

\(\begin{array}{l}{y=C_{1} \sin a x+C_{2} \cos a x} \\ {\quad \rightarrow\left\{\begin{array}{l}{y=\sqrt{C_{1}^{2}+C_{2}^{2}} \sin (a x+\alpha)} \\ {\sin \alpha=\frac{C_{2}}{\sqrt{C_{1}^{2}+C_{2}^{2}}}, \cos \alpha=\frac{C_{1}}{\sqrt{C_{1}^{2}+C_{2}^{2}}}}\end{array}\right.}\end{array}\)

より、新たに任意定数を\(C=\sqrt{{C_1}^2+{C_2}^2}\)とおくと

\(y=C\sin (ax+\alpha)\)

とできます。そこに初期条件を代入すると特殊解が求まります。

これらの過程をまとめると以下のようになります。

二階微分方程式の解法

\(\displaystyle\frac{d^{2} y}{d x^{2}}=-a^{2} y\)

① \(\sin ax, \cos ax\)が基本解となることから、

\(y=$y=C_{1} \sin a x+C_{2} \cos a x$\)

② 三角関数の合成を適用して

\(\begin{aligned} y &=C_{1} \sin a x+C_{2} \cos a x \\ & \rightarrow\left\{\begin{array}{l}{y=\sqrt{C_{1}^{2}+C_{2}^{2}} \sin (a x+\alpha)} \\ {\sin \alpha=\frac{C_{2}}{\sqrt{C_{1}^{2}+C_{2}^{2}}}, \cos \alpha=\frac{C_{1}}{\sqrt{C_{1}^{2}+C_{2}^{2}}}}\end{array}\right.\end{aligned}\)

③ 新たな任意定数\(C\)をもちいて

\(y=C \sin (a x+\alpha)\)

最終的な形は簡単になるので頭に入れておくと良いでしょう!

4.3 例題

例題を解いてみて解き方を確認しましょう。

【例】微分方程式\(\displaystyle\frac{d^2 y}{dx^2}=-4y\)を解いてみましょう。

基本解が\(\sin 2x, \cos 2x\)だから

\(y=C_1 \sin 2x +C_2 \cos 2x\)

三角関数の合成より、\(C=\sqrt{C_{1}^{2}+C_{2}^{2}}\))とおくと

\(y=C\sin (2x+\alpha)\)

となり、一般解を求めることができました。

5. 物理への応用

上の3つが高校物理で用いる微分方程式です。どのように使われているか確認してみましょう!

5.1 直接積分形(等加速度直線運動)

直接積分形\(\displaystyle\frac{dy}{dx}=f(x)\)が用いらていれる例としては、等加速度運動があります。実際に運動方程式を解いていく際に、直接積分形を用いる必要があります。

【例】運動方程式\(\displaystyle\frac{dv}{dt}=a\cdots(*)\)について、速度と変位を求めていきましょう。

速度\(v\)について、(*)の両辺を\(t\)で積分して、

\(v=\displaystyle\int a dt =at+v_0\)

が分かります。\(v_0\)は初期条件から求まる初速度です。

次に変位\(x\)についてですが、\(\displaystyle\frac{dx}{dt}=v\)の関係があるので

\(\displaystyle\frac{dx}{dt}=at+v_0\)

これについて、両辺を\(t\)で積分すると

\(x=\displaystyle\int (at+v_0 )dt=\displaystyle\frac{1}{2}at^2 +v_0 t+x_0\)

となり、等加速度運動の公式を導出することができました!

5.2 変数分離形(RL回路)

変数分離形\(\displaystyle\frac{dy}{dx}=f(x ) g(x)\)の例としてRL回路の挙動について考えてみましょう。RL回路とは、電源・抵抗・コイルが直列に繋がった回路のことで、特別な挙動を示します。

【例】RL回路

回路の状態方程式

\(L\displaystyle\frac{di}{dt}+Ri=E\)
\(∴\displaystyle\frac{1}{E-Ri}\displaystyle\frac{di}{1}=\displaystyle\frac{1}{L}dt\)

これは変数分離形です。両辺を積分すると

\(\displaystyle\int\displaystyle\frac{1}{E-Ri}di=\displaystyle\int\displaystyle\frac{1}{L}dt\)

これを計算すると

\(-\displaystyle\frac{1}{R}\log |E-Ri|=\displaystyle\frac{1}{L}t+D_1\)

となります。以下\(D_i\)は任意定数です。

\(\log|E-Ri|=-\displaystyle\frac{R}{L}t+D_2\)
\(∴|E-Ri|=e^{-\frac{R}{L}t+D_2}\)
\(∴E-Ri=±e^{-\frac{R}{L}t}\times e^{D_2}\)
\(∴E-Ri=D_3 e^{-\frac{R}{L}t}\)
\(∴-Ri=-E+D_3 e^{-\frac{R}{L}t}\)
\(∴i=\displaystyle\frac{E}{R}-De^{-\frac{R}{L}t}\)

ここで、\(t=0\)で\(i=0\)という初期条件を考えてみます。これを代入すると

\(i=\displaystyle\frac{E}{R}\left(1-e^{-\frac{R}{L}t}\right)\)

となり、電流と時間の関係式が求まりました。グラフにすると下図のようになります。

このグラフから、最終的には電流の変化が緩やかになり、コイルの両端の電圧差が0に近くなるため、コイルが存在していない(導線と変わらない)と解釈できます!

5.3 二階微分方程式(単振動)

二階微分方程式\(\displaystyle\frac{d^{2} y}{d x^{2}}=-a^{2} y\)が登場する例として、単振動を扱っていきます。

【例】

単振動の問題で題材になりやすい「ばねの先につけたおもりの運動」について考察していきたいと思います!ばね定数を\(k\)、おもりの質量を\(m\)として考えていきます。

運動方程式

\(m\displaystyle\frac{d^2 x}{dt^2}=-k(x-x_0)\)

平衡点\(x_0\)からの変位を\(X=x-x_0\)とおくと

\(\displaystyle\frac{d^2 X}{dt^2}=-\displaystyle\frac{k}{m}X\)

となります。これは二階微分方程式です。つまりこの運動方程式の一般解は、\(\omega=\sqrt{\displaystyle\frac{k}{m}}\)とすると

\(X=C_1\sin \omega t+C_2 \cos \omega t\)

とできます。ここで初期条件\(X(0)=X_0, v(0)=v_0\)を代入すると

\(\begin{cases}C_2=X_0\\v(0)=\displaystyle\frac{dX}{dt}=\omega C_1=v_0\end{cases}\)
\(∴C_1=\displaystyle\frac{v_0}{\omega},\quad C_2=X_0, \)

よって特殊解は

\(X=\displaystyle\frac{v_0}{\omega}\sin \omega t+X_0 \cos \omega t\)

となります。また、\(A=\sqrt{{\frac{v_0}{\omega}}^2+{X_0}^2}\)とすると

\(X=A\sin (\omega t+\alpha)\)

とできます。このとき\(A\)は振幅と呼ばれます。

このように、物理においては微分方程式が大活躍します!自分でできるようにしておきましょう。

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