東大塾長の山田です。
このページでは、【数学ⅠA】の「三角比sin,cos,tanの相互関係」について解説します。
相互関係の式は、理解をすれば簡単に覚えることができます。
“覚える”というより、自分で一瞬で導けるようになることができます。
この記事を最後まで読んで、三角比の基礎を固めましょう!
1. 三角比の相互関係の公式
三角比の相互関係の公式とは次の3つの式です。
・\( \displaystyle \large{ \color{red}{ \tan \theta = \frac{\sin \theta}{\cos \theta} } } \cdots ① \)
・\( \displaystyle \large{ \color{red}{ \sin^2 \theta + \cos^2 \theta = 1 } } \cdots ② \)
・\( \displaystyle \large{ \color{red}{ 1 + \tan^2 \theta = \frac{1}{\cos^2 \theta} } } \cdots ③ \)
\( \sin \theta, \ \cos \theta, \ \tan \theta \) のうち1つでも値がわかれば、①~③の関係式から残りの2つの値を求めることができます。
三角比 \( \sin \theta, \ \cos \theta, \ \tan \theta \) の値を求める問題では必ず使う関係式なので、絶対に覚えましょう。
「\( \sin^2 \theta \)」は「\( (\sin \theta)^2 \)」のことで、「サイン2乗シータ」と読みます。
2. 三角比の相互関係の導き方(覚え方)
それでは、三角比の相互関係の式の導き方を解説していきます。
まずは、\( \sin, \ \cos, \ \tan \) の定義を確認しましょう。
半径1の円とその円周上の点 \( P(x, y) \) を考えると
・\( x \ 座標= \cos \theta \)
・\( y \ 座標= \sin \theta \)
・\( \displaystyle \frac{y}{x}(OPの傾き)=\tan \theta \)
となる。
※ \( \sin, \ \cos, \ \tan \) の定義については「【数学Ⅰ三角比】sin cos tanの表と覚え方」の記事で詳しく解説しています。
上の図より、
\( \displaystyle \color{red}{ \tan \theta = \frac{y}{x} = \frac{\sin \theta}{\cos \theta} } \cdots ① \)
また、三平方の定理から
\( x^2 + y^2 = 1 \)
したがって
\( \color{red}{ \sin^2 \theta + \cos^2 \theta = 1 } \cdots ② \)
さらに、②の式の両辺を \( \cos^2 \theta \) で割ると
\( \begin{align}
\displaystyle \frac{\sin^2 \theta }{\cos^2 \theta } + \frac{\cos^2 \theta }{\cos^2 \theta } & = \frac{1}{\cos^2 \theta } \\
\\
\displaystyle \left( \frac{\sin \theta}{\cos \theta} \right)^2 + 1 & = \frac{1}{\cos^2 \theta } \\
\\
\displaystyle \tan^2 \theta + 1 & = \frac{1}{\cos^2 \theta}
\end{align} \)
したがって、
\( \displaystyle \color{red}{ 1 + \tan^2 \theta = \frac{1}{\cos^2 \theta} } \cdots ③ \)
以上より、①〜③の式を導くことができました。
この流れは、理解してしまえばとても簡単なので、丸ごと理解して覚えてしまいましょう。
そうすれば、ど忘れなどは一切無くなります!
3. 三角比の相互関係の例題
それでは、相互関係の式を使って具体的に問題を解いていきましょう。
3.1 例題(1)
\( \theta \)は鋭角とする。\( \displaystyle \sin \theta = \frac{1}{3} \) のとき、\( \cos \theta \) と \( \tan \theta \) の値を求めよ。
【解答】
\( \sin^2 \theta + \cos^2 \theta = 1 \) より
\( \begin{align}
\cos^2 \theta & = 1 – \sin^2 \theta \\
\\
\displaystyle & = 1 – \left( \frac{1}{3} \right)^2 = \frac{8}{9}
\end{align} \)
\( \theta \) は鋭角だから、\( \cos \theta > 0 \)
よって \( \displaystyle \color{red}{ \cos \theta = \frac{2\sqrt{2}}{3} \cdots 【答】 } \)
また、
\( \begin{align}
\displaystyle \color{red}{ \tan \theta } & = \frac{\sin \theta}{\cos \theta} \\
\\
& = \sin \theta \div \cos \theta \\
\\
\displaystyle & = \frac{1}{3} \div \frac{2\sqrt{2}}{3} \\
\\
\displaystyle & = \frac{1}{2\sqrt{2}} \\
\\
\displaystyle & \color{red}{ = \frac{\sqrt{2}}{4} \cdots 【答】 }
\end{align} \)
3.2 例題(2)
\( \theta \)は鋭角とする。\( \tan \theta = 2\sqrt{2} \) のとき、\( \sin \theta \) と \( \cos \theta \) の値を求めよ。
【解答】
\( \displaystyle 1 + \tan^2 \theta = \frac{1}{\cos^2 \theta} \) より
\( \displaystyle \frac{1}{\cos^2 \theta} = 1 + \left( 2\sqrt{2} \right)^2 = 9 \)
よって \( \displaystyle \cos^2 \theta = \frac{1}{9} \)
\( \theta \)は鋭角だから、\( \cos \theta > 0 \)
よって \( \displaystyle \color{red}{ \cos \theta = \frac{1}{3} \cdots 【答】} \)
また、\( \displaystyle \tan \theta = \frac{\sin \theta}{\cos \theta} \) より
\( \begin{align}
\color{red}{ \sin \theta } & = \tan \theta \times \cos \theta \\
\\
\displaystyle & = 2\sqrt{2} \times \frac{1}{3} \\
\\
\displaystyle & \color{red}{ = \frac{2\sqrt{2}}{3} \cdots 【答】}
\end{align} \)
3.3 応用問題(1)~(3)
\( \displaystyle \sin \theta + \cos \theta = \frac{1}{2}(0^\circ < \theta < 180^\circ)\) のとき、次の値を求めよ。
(1) \( \sin \theta \cos \theta \)
(2) \( \sin^3 \theta + \cos^3 \theta \)
(3) \( \sin \theta – \cos \theta \)
【解答】
(1) \( \displaystyle \sin \theta + \cos \theta = \frac{1}{2} \) の両辺を2乗して
\( \displaystyle \sin^2 \theta + 2\sin \theta \cos \theta + \cos^2 \theta = \frac{1}{4} \)
\( \sin^2 \theta + \cos^2 \theta = 1 \) だから
\( \displaystyle 1 + 2\sin \theta \cos \theta = \frac{1}{4} \)
\( \displaystyle 2\sin \theta \cos \theta = -\frac{3}{4} \)
\( \displaystyle \color{red}{ \sin \theta \cos \theta = -\frac{3}{8} \cdots 【答】 } \)
(2) \( \color{red}{ \sin^3 \theta + \cos^3 \theta } \)
\( \begin{align}
& = (\sin \theta + \cos \theta)^3 – 3\sin \theta \cos \theta (\sin \theta + \cos \theta) \\
\\
\displaystyle & = \left( \frac{1}{2} \right)^3 – 3\left( -\frac{3}{8} \right) \cdot \frac{1}{2} \\
\\
\displaystyle & \color{red}{ = \frac{11}{16} \cdots 【答】 }
\end{align} \)
※切れている場合は横スクロールして見てみてください。
\( \sin^3 \theta + \cos^3 \theta = (\sin \theta + \cos \theta)^3 – 3\sin \theta \cos \theta (\sin \theta + \cos \theta) \)の変形のやり方は、対称式で学習した考え方です。
対称式の式変形については「【数学Ⅰ】対称式の基本と因数分解など全問題」で詳しく解説しているので、不安な人は確認しておきましょう。
(3) \( (\sin \theta – \cos \theta)^2 \)
\( \begin{align}
& = \sin^2 \theta -2\sin \theta \cos \theta + \cos^2 \theta \\
\\
\displaystyle & = 1 – 2\left( -\frac{3}{8} \right) \\
\\
\displaystyle & = \frac{7}{4}
\end{align} \)
\( 0^\circ < \theta < 180^\circ \) のとき \( \sin \theta > 0 \) である。
また \( \displaystyle \sin \theta \cos \theta = -\frac{3}{8} < 0 \) から \( \cos \theta < 0 \)
よって、\( \sin \theta \ – \cos \theta > 0 \)
したがって
\( \displaystyle \color{red}{ \sin \theta – \cos \theta = \frac{\sqrt{7}}{2} \cdots 【答】} \)
4. 三角比の相互関係のまとめ
さいごに、三角比の相互関係のまとめをします。
・\( \displaystyle \color{red}{ \tan \theta = \frac{\sin \theta}{\cos \theta} } \cdots ① \)
・\( \displaystyle \color{red}{ \sin^2 \theta + \cos^2 \theta = 1 } \cdots ② \)
・\( \displaystyle \color{red}{ 1 + \tan^2 \theta = \frac{1}{\cos^2 \theta} } \cdots ③ \)
\( \sin \theta, \ \cos \theta, \ \tan \theta \) のうち1つでも値がわかれば、①~③の関係式から残りの2つの値を求めることができます。
これらの式の導き方を含めて覚えましょう。
そうすれば、簡単に相互関係の式を覚えることができ。深く理解できます。
数ⅠAの「三角比」は、数ⅡBの「三角関数」の基礎にもなるので、しっかりと三角比の基礎を固めておきましょう!
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